近未来少年少女



『なくなっちゃったんだね、駄菓子屋……』

俺は改めて、売り地と書かれた看板を見つめた

おばちゃんはそれを見て、少し寂しげに微笑んだ


『足を悪くしてからは一人でやっていくのが大変でね。店も何十年と頑張ってきたから、そろそろ休ませてあげないとって…昨年取り壊したんだよ』


昨年か………

確かにおばちゃんも店も、随分歳だ

無理をするより、こうした結果が一番いい方法だったのかもしれない


でもやっぱり………


『ここに駄菓子屋がないと寂しいな…』


記憶がなくなっていなければ、俺はあの後も駄菓子屋に通っていたと思う

現在も駄菓子屋を利用していたかは分からないけど……

駄菓子屋が無くなった事実をこんなに遅く知る事はなかった


俺の言葉におばちゃんは“寂しくないよ”と言いながら……

手に持っていた風呂敷の布をほどき始めた

……………?


四角い形をした“何か”が布から見え、おばちゃんは包まれていた布を完全に取った


そこには見覚えのある額縁

『これは今でもおばちゃんの宝物。これを見る度に幸せな気持ちになるんだよ』

おばちゃんが持っていたのは一枚の絵


俺とミノル…そしておばちゃんが駄菓子屋の前で笑ってる絵


俺はこの絵のおかげでこの世界に戻る事が出来たんだ


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