近未来少年少女




『逃げたな……あいつ』

みのるがボソッと言った

みのるはこんな状況になる事を初めから分かってたみたいな口調だった


『ミノルの奴、これ以上俺達と話すと心が揺れ動きそうだったから逃げたんだよ』


『な、なんで………』


『俺はあいつだから分かる。10年間一人で悩み続けて苦しみ続けた意地があるんだよ。そう簡単に自分の意思は曲げられないってね』

意地って…………

『じゃぁ……どうすれば……』


『簡単だよ』


みのるはそう言うと同時に、バッと“何か”俺にを投げた

!!!!!!


ガシッと吸い込まれるように、それを両手でキャッチした


『なんかもうめんどくさいから“それ”で十分だろ』

俺は手の中にある物に目を向けた


『言葉なんていらねーよ。“それ”があれば………その“サッカーボール”があれば二人の間の壁なんてすぐぶち壊れるさ』


みのるが投げたのは紛れもない、俺達の絆のサッカーボールだった

そうだ……俺慌ててこっちの世界に戻って来たから、向こうの世界に忘れて来たんだった……


でも…どうしてみのるが…

いや、みのるに“どうして”なんて聞く方が馬鹿だったな

俺はサッカーボールをギュッと握りしめた


“2年2組 ユウキ”

親父が書いてくれた字はもう随分かすれてしまった


このボールも10年の時が経ったんだもんな……
……………

みのるの言う通りだ


難しい言葉なんていらない
何もいらない


俺は目を瞑って深呼吸した…………………
………

フゥ………よし…………!



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