お昼の放送です。
MFのスタジオがある局内に入り、まずはスタッフさんに挨拶。
「よろしくお願いします!」
「よろしく、ユズちゃん」
「よろしくー」
「ユズ、次に行くわよ」
「はいっ」
由芽さんについていくと、1つの楽屋らしき前に立たされた。
「この中に『AZUMI』さんがいるわ。
挨拶してきなさい?」
「は・・・はい!」
「わたしは兄と打ち合わせがあるから」
「はい!・・・って、兄?」
「『AZUMI』のマネージャーはわたしの兄なの」
「あ・・・そうなんですか」
初耳・・・。
私はノックして、扉を開けた。
「た、田宮ユズです!よろしくお願いします!!」
「・・・ん、よろしく」
・・・この声、どこかで聞いたことある気が・・・・。
恐る恐る顔を上げると、『AZUMI』さんが目に入った。
デビューした時から変わらない、黒髪に赤い瞳。
黒くて太くて大きな眼鏡をかけながら、見たことがある分厚い本を読んでいた。
あの眼鏡に、あの本・・・どこかで・・・・・。