あの子の人形
「拓巳が女子の下の名前を呼ぶの初めて聞いた!」
「何々?二人、付き合ってんの?」
みんなが口々に問う。
「えっと……」
私が困っていると、拓巳くんは私の手を握った。
拓巳くんを見ると、にこっと微笑んでくれた。
「大丈夫だよ」って言ってくれているみたいだった。
「そうだよ。僕は杏子と付き合ってる。だから、下の名前で呼んでるんだ。な?杏子」
拓巳くんは優しい笑みを浮かべる。
「うん、拓巳くん……」