あの子の人形



教室に入ると、拓巳くんはいた。


神田さん達と一緒に。


一緒にいるならまだしも神田さんは拓巳くんの腕を組んでいて距離が近い。


「ねぇ、拓巳。聞いてよ。この前、買い物に行ったときにね……」


神田さんは甘ったるい声で拓巳くんに話しかける。


神田さんは拓巳くんの名前を呼び捨てで呼んでいた。


これじゃあ、「拓巳くん」って呼んでいる私よりも「拓巳」って呼んでいる神田さんのほうが拓巳くんの彼女みたいだ。


そう思ったのは私だけじゃないみたいで。


「二人ともラブラブだね~」


神田さんの友達の一人、倉木七菜がニヤニヤと笑いながら二人を冷やかす。


「本当。二人とも付き合っちゃえばいいのに」


神田さんの友達の一人、山西加絵も二人を冷やかした。


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