エンドレス・キス


どうやら私と椎名さんで最後だったらしい。

私たちがイスに座ると、一人の男の人が立ち上がった。


「じゃあ、早速始めようか。私が監督の持田です。宜しく頼みます」


ぺこりと一礼した髭面の男の挨拶にパチパチとまばらな拍手が起こる。

私はただ一人苦虫を噛み潰したような顔をしてそれを聞いていた。

だって、この人こそ私が今困っている元凶を作った人。

私がいるのは、次のクールから始まるドラマの顔合わせだった。

普通の女子大生の私が何故こんな場所にいるか。
それは、私の母親の仕事と関係ある。

私の母親は、芸能事務所の社長なのだ。
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