キスなんて贅沢はいらないから
私が礼を言うと、彼は優しく笑った。

その笑顔はとても綺麗で、見とれてしまいそうだった。

お兄ちゃん似てる。

じゃあ、と言って去っていく背中を、私はなぜか名残惜しく思った。

「ちょ、ちょっと待って!」

その声は情けないほど小さくて震えていた。

でも彼は聞いてくれたようで、私の方へくるりと振り返った。

「何?」

「ええと、その・・・。何組?」

「3組だけど。」

「ああ、そうなんだ。ごめんね。特に何もないの。ありがとう。」

私が本当に聞きたかったのはそんなことじゃないけど・・・。

まあいいや。

“3組の彼”は教室から出ていくと、すぐに友達が寄って集っていた。

きっと人気者なんだな。

わざわざ名札を届けて来てくれるような優しい人だもん。








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