キスなんて贅沢はいらないから
私のテンションの上がりようにお兄ちゃんはぷっと吹き出した。

「そんなに喜んでくれるとは。作りがいあるねえ。」

確かによく考えると少し幼稚だったかもしれない。

「ひ、久しぶりだったから・・・だよ。」

急に恥ずかしくなって言い訳をする。

照れ隠しにそそくさと席につき、パンにかじりついた。

テレビからは今日の天気予報が流れている。

「今日は午後から雨か。傘持っていかなきゃなあ。」

お兄ちゃんはお弁当箱を巾着に入れながら呟いた。

窓を見ると、分厚いグレー色の雲が空を覆っていた。

苺ジャムを塗りたくった甘いパンはあっという間になくなり、

私はごちそうさま、と言った。



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