キスなんて贅沢はいらないから
今、6月。

梅雨の季節。

私が小学生の頃、梅雨を「うめあめ」って言ったのを聞いて

笑いながら本当の読み方を教えてくれたのはお兄ちゃんだった。

まだ雨は降っていないものの、蒸し暑い感じ。

あのあとほどなくして家を出た私は今通学路に居る。

私の前を行く人はどうやら恋人らしき人と引っ付いて歩いている。

羨ましい、と思った。

その人がかっこいいからとかそんなのじゃなくて、

二人のしている行為に、憧れを感じた。

私もお兄ちゃんと仲良く手を繋ぎ、

一組のカップルように引っ付いて歩きたい。

その想いの意味って、きっと分かっているような気がするけど、

まだ分かってないふり。

知らないふり。

今のままでいい。

怖いんだきっと。

お兄ちゃんとの生活が壊れてしまうのが怖いんだ。

ずっとずっと、近くにいたい・・・。



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