キスなんて贅沢はいらないから
教室のドアを開けて、周りを見渡す。

みんな楽しそうにふざけあったり、おしゃべりしたりしてる。

誰も私を見ない。

無視されてるわけじゃない。

いじめられてるわけでもない。

ただみんな、私の存在に気づかないだけ。

透明人間。

幽霊。

誰も私の陰口なんていわないし、嫌がらせしたりしない。

だからいいの。

このまま卒業するまでずっと平穏に、荒波を立てず、静かにいたら良いんだ。

平和が一番だって私は思う。

学校なんて、私にはどうでもいい。

私が大切なのは友達なんかじゃない。

お兄ちゃんだけだから。

チャイムがなった。

すぐに朝礼が始まるだろう。

これから私の無の時間が始まる。
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