キスなんて贅沢はいらないから
2
外は大雨だった。

下駄箱に群がる生徒は皆雨に不満を漏らしている。

私は可愛いげのないビニール傘を手に取り、校舎を出た。

今日も何事もなかった。

当たり前だけど。

大粒の雨が、大きな音をたてて傘に落ちる。

地面を見るといくつもの水溜まりができ、道を遮っていた。

いらいらする。

雨は嫌い。

理由なんてないけど。

違うな、理由が有りすぎて言いきれないんだ。

きっとお兄ちゃんは雨は好きだよ、とか言うんだろうな。

お兄ちゃんはいつも不思議で私には難しいことばかり言う。

お兄ちゃんはよくわからない。

でも、わからないから、知りたくなるんだ。

黒い雲の間からは、とうとう雷が光始めた。

早く帰らなくちゃ。

私は重い足を無理やり早く動かした。








< 8 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop