キスなんて贅沢はいらないから
家の窓からは明かりが漏れていた。

お兄ちゃんもう帰ってるんだ。

なんだかほっとして、家に入った。

「いろはおかえりー!」

リビングからお兄ちゃんの声が聞こえてくる。

口角が勝手に上がるのを自分で感じた。

靴を脱ぎ、廊下に足を踏み出そうとしたとき、

ふといつも見ないものに目が留まった。

玄関の脇に置かれたピンクの傘。

雨に濡れているので、私に買ってきたものではないだろう。

この家のものではないと気づいた瞬間、体にぞわりと何かが通った。

誰のものなの・・・?

恐る恐るリビングの部屋を開けた。

私、今どんな顔してるんだろう。

「お兄ちゃん、あのピンクの傘どうしたの・・・?」





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