**海の音*太陽の色**

目撃

そして柊子と尚に家まで送ってもらい柊子に愛車を返し玄関を開けた。
台所にいる母に向かって
『おかあさ~ん!』と叫んだ。
『あぁ帰ってきてたの。何?』
(花火の為に服が欲しい・・・
とは言えないな。)
『えっとね、給料が月末だから前借りしたいの。』
『ふ~ん。で、いくら?』
『1万!』
『あんた本当に返すんでしょうね!?』
『あたぼーよ!』
そしてニタニタしながら自分の部屋へと階段をかけ上がった。
Tシャツとハーフパンツに着替えながら髪を一つに結んだ。
階段を降りて台所にいる母に
『お金今ちょうだい』
と手を伸ばすと母は有の手をパチンと叩き、
『待ってて!』と言いリビングへ行ってしまった。
台所に一人残された有は夕食が二つラップにくるまれているお皿に目がいった--
(お父さんまた残業か・・・)
『お母さんご飯食べるね!いただきます』と手を合わせる。
(このスパゲティーやや柔らかめだなぁ。味濃いなぁ。)
と考えつつも野生化したかの様にバクバク食べた。
しばらくするとようやく母が戻ってきた。
『はい、1万。絶対給料日に返してね。無駄遣いするんじゃないよ。』
『ありがとうお母様!』
有はハーフパンツのポケットに1万円札を折り畳み入れた。

『ごちそーさん!』
有は流し台に食器を置くと一目散に部屋へ戻った。
(何着てこうかな~?は・な・び!)
そしてベッドの下に散乱した雑誌を手に取り何か考える有。
『あ~だめだわ。今月号買いに行こっと。』
独り言を呟くと階段をまた降りた。
本当に忙しい子・・・
『お母さんちょっとコンビニ行ってきまーす!』
そう言うと玄関を出て有はスリッパで近所のコンビニへと歩いた。
犬の散歩やジョギングしている人。
人間観察をしながら花火の日に着て行く服を考えていた。
すぐにコンビニに着いた
コンビニの前には不良の様な怖そうな人達が座っていた。
(あ~ぁ煙草臭ぇなぁ)

まじぃ?すげぇじゃん。あははははは
そいつらのデカい声が聞こえる。
(近所迷惑。前通るのやだなあ)
少しだけ、ほんの少し遠回りしてコンビニに入った。
エロ本を立ち読みしているおじさんの隣でファッション雑誌を選ぶ。
すると一台の車がコンビニの駐車場に停まった。
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