タイムマシン【短編】
その後の若い私は、不本意ながら彼女にお金を出してもらい、店を出た。

これではコンドームのマイナスは無くなったものの、マイナスであることに変わりは無い。

その後も後を付けていくと、どうやらこのレストランに来るまでの道のりを逆戻りしているようだった。

雑貨屋や、アイスクリーム屋で、彼はしきりに「財布の落し物ありませんでしたか?」と、聞いていた。


家に忘れたのではなく、落としたのだろう。
そして肩も落とした彼に彼女はこう言った。


「見つかるといいなぁ。私も一緒に探すからさ。諦めないでがんばろっ」


「ありがとう…。本当にゴメンね」

本当だよ!せっかくのデートなのに…。それにしても…美希ちゃん。


「大丈夫だよ!次は交番行ってみよっか」

彼女は…なんていい娘なんだ…。私は君に……。



その後は私もさり気なく探したが、財布は見つかることなく、一日が終わった。

気を落として背中を丸めた過去の私が、美希ちゃんにこう言った。

「ゴメンね…。せっかくのデートが台無しになっちゃって」

本当だよ!大ばか者!


「いいの…。探してる時間も…私にとってはデートだから」


そう言った美希ちゃんは、とても爽やかな笑顔をしていた。そのはにかんだ笑顔は、今の私でも恋に落ちてしまいそうなほど、愛おしかった。



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