タイムマシン【短編】
公園の中央には、美希ちゃんが立っていた。
過去の私は自転車を降りて駆け寄る。


「美希ちゃん!どうしたの?こんな時間に?」

「やっと…この時間になって親に開放されたの。だから、会いたくって…家を抜けてきちゃった」


そう言った美希ちゃんは、昔の私に抱きついた。私も、美希ちゃんを抱きしめ返しているようだった。

私はさり気なく、木陰からその様子を覗いていた。

その後も熱いキスを交わし、見ている自分が恥ずかしくなった。


「そろそろ…帰るね。怒られちゃうから」


「うん…。ありがとう。会えて嬉しかった」


「いや、私が急に呼んだんだから、私のほうがありがとうって言いたい」


二人は離れるのが嫌なのか、手を繋いだままモジモジしていた。
その光景は、私の記憶には全くなかった。
過去の私はもうすでに、私の姿をした、別の人間だった。


「家まで送ってくよ?」


「ううん…チャリだし、一人で帰れる。家の前でお母さんに見つかったらマズいし…」


若い私の言葉に、美希ちゃんは断った。

そして、それぞれが家路に向かって別れたのだが、私は美希ちゃんを見届けてから家に帰ろうと思った。


ゆっくりと、さり気なく、車で後を追った。


代わりに私が見送るから大丈夫だよ、という気持ちもあった。
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