タイムマシン【短編】
車の中はスモークガラスのせいで見えなかったが、中から彼女の悲鳴が聞こえた気がした。

―ドンドン!


「開けろー!」

窓ガラスを叩いて叫んだが、反応はなかった。鍵はかかっていて、美希ちゃんは車の中で犯されているようだった。

私に気付いた中の連中が、運転席に戻り、車のエンジンをかけた。

逃げる気か!そうはさせない!

私は足元に落ちていたスコップを拾い、運転席の窓を叩いた。

―ガッシャン!

三回叩くとガラスはほとんど割れ、四発目は運転席の男の頭に当たった。



開いた窓から鍵を外してドアを開け、意識を失った男を外に引きずり降ろし、バンの奥へと進入した。

奥にはもう一人の男いた。その横に美希ちゃんは倒れていた。
私は近付きながら叫んだ。


「テメェら!おい!!」

「なんだよ…テメェ…」

男がひるんだ隙にスコップで腹を突いた後、倒れた男の上に馬乗りになり、顔面を何度も殴った。


「うおおぉぉぉ!」


「おじさん…もういいよ、ありがとぅ…。その人死んじゃうよ」

彼女の言葉で私は我に返り、倒れている美希ちゃんにそっと近付いた。



< 19 / 35 >

この作品をシェア

pagetop