タイムマシン【短編】
タイムトラベルの飛ぶ年数の研究を、今の若い大木博士に伝える必要はなかった。

私がもう生み出しているから、あとは現代に戻って博士に会うだけだ。

私は郊外の小さな研究所で、タイムマシンを完成させた。


これで元の世界へ戻るんだ。


出力を合わせ、およそ40年後に行くように設定する。

これで40年後の博士に会い、成功して、戻って来ましたと伝えたかった。

例のごとく時限爆破装置もセットする。


ボロボロになった博士の研究資料と、新しく私が作った資料も持った。お金はもう、いらないだろう。研究所と一緒に灰にしよう。


私はスイッチを入れ、気を失い、気が付くと空き地に倒れていた。


空き地には研究所の残骸のようなものが少し残っていた。


「戻った…のか?」


私は歩き、彷徨った。

建物でわかる。

―未来だ。

ほんの少し前までは建っていなかった高いビルが見える。
そのビル群の中に、日付けと時刻をモニターに出しているビルがあった。
私は目を細めてモニターを見た。

2906年…!

私が最初に飛び立ってから1年後の世界だ。

ということは、この世界の私はタイムトラベルに行ってしまっているのか?

それとも、美希ちゃんと一緒に過ごしているのか?

博士の研究所に行く前に、私は実家へ寄ることにした。


「ここは…俺の家だ」


中に入って確かめたかった。


歴史は変わっているのか?


私はこの世界で、どんな生活をしているのか?


美希ちゃんとうまくいっているのか?


タイムトラベルに出てしまっていれば、私がここに住めばいいだけだ。
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