タイムマシン【短編】
「圭…?」


母に近付く私は、目から涙が溢れ出し、止まらなかった。


「母さん…良かっ…た」


私はそのまま母のベッドに抱きつくように倒れこんだ。


「圭…?圭なの?」


母の目は私を見ているようで、ピントが合っていなかった。


「圭だよ…。母さん、ここだよ?」

私は母の顔の前で手を振った。


「圭のはずがない…圭がいるはずが…」


母は私の声に戸惑っていた。


「ここにいるよ…母さん。見えないの?」


母の手に触れる。手が冷たいのか、感覚がない。


「だって、あなたは3年前に死んだのよ」


死んだ…?


「え……?なんで…?」



「あなた……美希と一緒にオオキとか言うテロリストに撃たれて死んだのよ。生きてる訳…ない」


私が…撃たれて死んだ?



そんな…。




嘘だろ…?





その現実を知ったとき、私の手が、体がうっすらと消えていくのがわかった。


待ってくれ…!私はこれから3年前に行って……。



私の体が消えて、天に昇っていく。



「圭…本当にいい子だったね。…今までありがとうね」



母がくれた最後の言葉に、なんだか報われた気がした。


母の姿がどんどん小さくなっていく。


その横で私が流した涙のシミは、ベッドに残ったままだった。












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