タイムマシン【短編】
「私が飛んで、このタイムマシンの資料を、過去か未来の博士に渡します」


「しかし、飛ぶのは江戸時代や恐竜時代かもしれんぞ…!西暦2840年より前に飛んでしまったら…私は生まれていない!」


「その時は…その時です。博士の助手として、飛ばせて下さい。この研究は私も成功させたいんです。でも、政府にバレたりしたら大変なことになる。使うなら他人より、私を使って下さい」


「そこまで言うのなら…わかった。でも、いいのか?未来ならばともかく、遠い過去に飛んでしまったら、二度と現代に戻って来れないかもしれないぞ?」


博士のその言葉に、少しためらったが、私は決意する。


「…大丈夫です。私には妻も子供もいません。研究だけが生き甲斐でした。原始時代でも、強く生きて見せますよ!」


私はそう言うと、博士と熱い抱擁を交わした。


そして私は次元転換装置の研究資料のコピーと、しばらくは不自由しないであろう金額のお金と食糧を持ち、転換装置の中に入った。


「達者でな…。健闘を祈る」


「大木博士に会えることだけを祈っていますよ」


私がそう言うと、博士は無言で頷き、私の手を強く握った。

博士の手は温かかった。

博士は目からこぼれ落ちた涙を拭かずに、扉をゆっくりと閉めた。
< 4 / 35 >

この作品をシェア

pagetop