タイムマシン【短編】
博士がスイッチを入れると、私は自分の身体が電流に包まれていくのを感じ、気を失った。

そして気が付くと、緑に囲まれただだっ広い空き地に、ぽつんと倒れていた。


「…成功…したんだ…。博士…!本当に…成功しましたよ…!」


そう言った私の目からは、涙が溢れていた。
そこには博士の姿も研究所もなく、私の手には博士の温もりだけが残っていた。




私は重いリュックを背負って、歩いた。しばらく歩き、ふと思い立った私は、後ろを振り返る。

私が倒れていた空き地を見ると、まさにそこは、現代では研究所が建っていた場所だった。

建物がまるっきり無くなっている。


建物がないだけで、奥に見える小高い山の景色は全く一緒だった。


ここは過去なのか?未来なのか?

それさえもわからない。


さらに歩くと民家が見えてきた。建物からして、そんなに古い建物ではないと感じる。

歩いている人達の格好を見ても、近い過去であることがわかった。

研究所が建つ前の過去のような気がした。

これなら、博士がもう生まれている時代なのではないか。



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