素直になりなよ、ドラゴンくん!
がっくりと肩を落とす僧侶。
僧侶の初期装備たる木の杖にすがるように、また泣いていた。
「泣くな。貴様の泣き声のせいで、我が輩の優雅な飛行に水を差された」
「ご、ごめんなさいっ」
「……」
「……」
「……」
「……、ひくっ」
「泣くな」
びくうぅと、固まる僧侶だった。
なんて怖いドラゴンなのだろうか。ワニよりも凶暴な口に頭から丸呑みにされてしまう想像もついた。
なのでーー
【僧侶は、にけだした!】
「おいっ!」
【しかし、敵に回り込まれてしまった!】
「誰が敵だあああぁ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいぃ!」
「そう怯えるな。光栄に思え、我が輩が近くの村まで連れて行ってやろう」
「え」
「イッテオクガ、こ、ここは、我が輩のオキニイリノ散歩コースなのだ。だ、だから、貴様みたいなウルサイノはメザワリナだけなのだ」
嘘つく時にはカタコトかみかみになるタイプのドラゴンだった。
しかしてドジっこどんくさの裏ステータスを持つ僧侶は気づかない。
「村って、私……またゲームに戻れるんですかっ」
「いや、ここはゲーム世界であって、そうではない。プレイヤーが旅する世界ではないのだ。除外された者だったり、控えの敵キャラがいる世界ーー」