漆黒のイカロス【短篇】
科学の進歩はあゆみを止めることなく。
かつては夢だといわれた宇宙ステーションが点在するようになった。
「いつかきっと行ってみせる」
子供の頃からとりつかれたように宇宙に夢中だった彼と共に、ひたすらそこに行く日を夢見て努力を続け……そして
「行ける、行けるんだ! やっと夢がかなった!!」
新しくできる宇宙ステーションのメカニックチームの選考試験に合格した彼のはちきれんばかりの笑顔。
抱き合って喜んだ。
出発の日、見送りにいった私に
「先に行って待ってるよ」
そう言って、手を振った。
だが、それが悲劇のはじまり。
ステーション外壁補修作業中に、敵対国の宇宙ステーションからの突然の攻撃をうけた。
新たな領域の支配権を巡って、地上ではあき足らず宇宙にまで侵略行為は持ちこまれた。
人はどこまで欲深く愚かなのだ。
その攻撃による衝撃で、切れた彼のライフライン。
彼は、生きたまま宇宙に投げ出された。
カイル……私の半身。
双子の弟。