漆黒のイカロス【短篇】


同じく生を受け、同じ時を過ごし、同じ夢を追った。

常にシンクロする思考と身体。

まさにカイルは半身そのもの……何にも、誰にもかえることの出来ない存在。

太陽に負けないほどに私を支配する存在。

それを失った私のなかに、生まれた暗く大きな闇。それは何にも埋めることはできやしない。

誰と居ても癒されない痛み、空虚感。

広く果てない宇宙にただひとりきり流されたままのカイル。

焦がれた宇宙を漂うカイルはもしかしたら満足かもしれないが……思い浮かべるその画はとてもさみしくて。

「イカロス……皮肉な名前ね」

巨大な機体は宇宙へ飛び立つための漆黒の翼を持っていた。

神話では太陽に翼を焼かれ落とされたモノ。

カイルの夢にひたすら近づこうとした努力の結果、すでにステーションに配属されていた私は、敵対国との宇宙戦闘に備え開発途中のその機体をはじめて見たとき、その翼に魅了された。


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