漆黒のイカロス【短篇】
さらに高度な試験をくぐりぬけ、イカロス開発スタッフにもぐりこみ。
時間をかけて信頼を得た。
男の世界の技術職、女の私には厳しい世界であったが、計画のためならそれはなんでもない苦労。
そしてようやく任されるに至り、少しずつ……計画の実行へと移る。
私の手により書き換えられたプログラム。イカロスはもう、私以外には動かせない。
私は宇宙へ飛び立つための翼を手に入れた。
(まってて……今、行くから)
コックピット内に、スピーカー越しにヴィンスの声が響く。
「死ぬかもしれないぞ」
「いいの」
カイルを見つけられる保証なんてない。
途中で力尽き宇宙の塵と果てるかもしれない。
それでもいい……
あなたと一緒にこの黒檀の空で星屑のひとつになれるならそれもいい……
闇で溶け合いまた一つになる。
元々あるべきカタチに戻るだけ。
暗くて柔らかな空間で同じ鼓動を聞いていたあの頃のように……