幸福なキス〜好きになっても、いいですか? SS〜
幸福なキス
*
「え! そんなにすぐですか?」
数日が経ったある日、社長室に居た敦志が驚きの声を上げる。
「まだあいつに了承は得てないが――まぁ、大丈夫だろ」
「……芹沢さんのこととなると、ワンマンに拍車が……」
「なに?」
「いえ。なんでも」
ギロリと睨みをきかされた敦志は、すぐに口を噤んだ。
用件を伝え終えた純一は、すでに仕事に戻っていたのだが。
「……純一くん。あれから二人暮らしはどうですか?」
「は?」
「ああ。正確には、〝一人と一匹の暮らし〟」
「……あーつーしー……。オマエ、最近やけに〝兄貴〟が出るな」
和気あいあいと和んでいたところに、ノックの音が飛び込んだ。
「はい」
敦志が秘書の癖で対応すると、ドアの向こうには雪乃が立っていた。
「お仕事中に、申し訳ありません。〝お義兄さま〟」
「雪乃ちゃん……。それ、なんか居心地が」
「ふふ。すみません。わざとですよ、純一さん」
イタズラな目をしてくすくすと笑いながら、雪乃は部屋の中央へと歩を進める。そして、ニコリと笑って続ける。
「そんな純一さんに朗報です。あのワンちゃんの飼い主さんが、決まりそうです」
犬が苦手と知る敦志と雪乃は、純一がどんな反応を見せるのかと顔を見てみると、眉ひとつ動かさずに、少しの間の後にこう言った。
「……そうか」
感情の読み取れないそのひとことに、雪乃と敦志は目を合わせた。
「え! そんなにすぐですか?」
数日が経ったある日、社長室に居た敦志が驚きの声を上げる。
「まだあいつに了承は得てないが――まぁ、大丈夫だろ」
「……芹沢さんのこととなると、ワンマンに拍車が……」
「なに?」
「いえ。なんでも」
ギロリと睨みをきかされた敦志は、すぐに口を噤んだ。
用件を伝え終えた純一は、すでに仕事に戻っていたのだが。
「……純一くん。あれから二人暮らしはどうですか?」
「は?」
「ああ。正確には、〝一人と一匹の暮らし〟」
「……あーつーしー……。オマエ、最近やけに〝兄貴〟が出るな」
和気あいあいと和んでいたところに、ノックの音が飛び込んだ。
「はい」
敦志が秘書の癖で対応すると、ドアの向こうには雪乃が立っていた。
「お仕事中に、申し訳ありません。〝お義兄さま〟」
「雪乃ちゃん……。それ、なんか居心地が」
「ふふ。すみません。わざとですよ、純一さん」
イタズラな目をしてくすくすと笑いながら、雪乃は部屋の中央へと歩を進める。そして、ニコリと笑って続ける。
「そんな純一さんに朗報です。あのワンちゃんの飼い主さんが、決まりそうです」
犬が苦手と知る敦志と雪乃は、純一がどんな反応を見せるのかと顔を見てみると、眉ひとつ動かさずに、少しの間の後にこう言った。
「……そうか」
感情の読み取れないそのひとことに、雪乃と敦志は目を合わせた。