幸福なキス〜好きになっても、いいですか? SS〜
顔を赤く染める間もなく、唇を重ねられる。
何度も角度を変えてのキスに力が入らなくて、そのまま麻子は押し倒されてしまう。
「――ンんっ……」
ようやく酸素を取り入れる時間を与えられたときに、無意識に目をゆっくりと開ける。
仰ぎ見たときに映る純一が、あまりに情熱的な目をしていて、それだけでまた麻子の心臓は締めつけられた。
「返事は」
ぽつりと降ってきた、高慢的な言葉。
だけど、その何十倍も優しさが詰まっていることを、麻子は知っている。
しばし見上げたまま、麻子が掠れた声を出す。
「……拒否権は」
「――――ない」
薄らと笑みを浮かべて言った純一が、麻子の指を絡めるように手を繋ぐ。そしてまた、麻子の顔に影を落とし、キスをした。