幸福なキス〜好きになっても、いいですか? SS〜
*
――翌月のある日。
その日は天気にも恵まれ、屋外での式には絶好の日和。
麻子は、スタッフが席を外し、一人きりの控室で大きな鏡に対峙していた。胸元に繊細な刺繍が施さた、シンプルなAラインのドレス。その清楚で美しいホワイト色を身に纏い、二人きりの式とは言え、多少緊張状態にいた。
(……自分じゃないみたい)
今まで、まるで自分に対しての欲などなかった麻子は、当然ドレスを一着決めることも出来ずに。
結局、雪乃の見立てで決めたそれを、式当日の今、着ていたのだ。
そのドレス姿は、未だに純一にはお披露目して居なく、それがまた、麻子の緊張のひとつの原因になっている。
鏡の向こうに立つ自分にそっと歩み寄ると、自分の首元に向かって手を伸ばす。
その先にあるのは、母の形見のネックレス――。
僅かな思い出の中から母を思い出し、感慨深い気持ちでいたところに、控室のドアが開いた。
目を向けると、そこには少し長めの丈が特徴の白いフロックコートを着た純一の姿。
普段のスーツ姿でも思うことだが、やはりその長身の長い手足は、こんな場面の衣装にとてもよく合う。男性なのにやけに綺麗な顔立ちも、一層その良さを引き立てていて。
思わず、いつも顔を合わせている純一相手に、見惚れてしまうほどだった。
「……ああ、似合うな」
頭のてっぺんから、つま先まで。じっくりと堪能するように眺める純一の視線に、麻子はふいっと顔を逸らして素っ気ない返事をする。
――翌月のある日。
その日は天気にも恵まれ、屋外での式には絶好の日和。
麻子は、スタッフが席を外し、一人きりの控室で大きな鏡に対峙していた。胸元に繊細な刺繍が施さた、シンプルなAラインのドレス。その清楚で美しいホワイト色を身に纏い、二人きりの式とは言え、多少緊張状態にいた。
(……自分じゃないみたい)
今まで、まるで自分に対しての欲などなかった麻子は、当然ドレスを一着決めることも出来ずに。
結局、雪乃の見立てで決めたそれを、式当日の今、着ていたのだ。
そのドレス姿は、未だに純一にはお披露目して居なく、それがまた、麻子の緊張のひとつの原因になっている。
鏡の向こうに立つ自分にそっと歩み寄ると、自分の首元に向かって手を伸ばす。
その先にあるのは、母の形見のネックレス――。
僅かな思い出の中から母を思い出し、感慨深い気持ちでいたところに、控室のドアが開いた。
目を向けると、そこには少し長めの丈が特徴の白いフロックコートを着た純一の姿。
普段のスーツ姿でも思うことだが、やはりその長身の長い手足は、こんな場面の衣装にとてもよく合う。男性なのにやけに綺麗な顔立ちも、一層その良さを引き立てていて。
思わず、いつも顔を合わせている純一相手に、見惚れてしまうほどだった。
「……ああ、似合うな」
頭のてっぺんから、つま先まで。じっくりと堪能するように眺める純一の視線に、麻子はふいっと顔を逸らして素っ気ない返事をする。