幸福なキス〜好きになっても、いいですか? SS〜
「雪乃さんの、センスですから」
「麻子の魅力だろ」
「――っ……」
(どうしてこの人は、いつも恥ずかしげもなくっ)
紅潮していく頬は、チークなんて必要なかったのではないかと思ってしまうほど。冷静になろうと必死になる麻子の腰に手を回し、純一は流れるようにエスコートする。
「行こう」
そこは、決して広くはないが、緑が生い茂り、隠れ家的な雰囲気。
真紅の絨毯が真っ直ぐに敷かれていて、青空と緑とのコントラストがとても美しい。
バージンロードの始まりに、麻子が純一と肩を並べて立つ。すると、スッと純一が牧師の待つ方へと行ってしまった。
(え……? 普通だったら確かに新郎は向こうに居て、新婦を待つんだろうけど……ふたりきりのこんなときはどうすればいいの?)
さっきまで傍にいた介添人の姿も見えず。麻子は内心動揺しながらも、その場に立っていた。
忙しなく目だけを動かしていると、フッと右側に人影が現れたのに気付いて顔を上げた。
「――――おっ……」
思わず声を上げた麻子は、驚きのあまり、言葉に詰まった。
目を見開いて隣を見る。それは、夢でも幻でもなく、本物の――。