幸福なキス〜好きになっても、いいですか? SS〜

まだ体制が完全ではない今は、副社長兼・秘書課管理の仕事をしている敦志に、麻子は半休の許可を仰ぐ。

さすがに、この状況で簡単に返事が出来ない敦志が戸惑いながら、純一の顔色をうかがう。すると、純一がムスッとした顔でひとこと投げやった。


「好きにしろ!」


そうして、バン! と大きな音を立ててドアを閉めると、純一は出て行ってしまった。


秘書室内では、その乱暴に閉められたドアを見つめながら、敦志が大きな溜め息を。そして、麻子は手の中の子犬を見つめながら、不貞腐れるような顔をしていた。


(普通会社にまで連れてくるか? 大体、あの犬を見つけた時点で俺に相談すれば、アテを探すなりしたものを――)


怒りに任せて、ずっと手に力を込めて握りしめていたものにふと気付く。

社長室に入ってからその手の力を緩めると、麻子の髪留めが自分を見上げているよう。それを見て、大人げない自分の行動にすでに反省する純一だった。

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