誰も知らない物語
ふと、夜空を見上げる
真っ暗な空に光る満月
「そういえば、夢で見た空も満月だったな」
自分で呟き、息を飲んだ
薄々気づいていたが、僕の周りで起こる現象は全て、夢の中と同じだ
師匠がいなくなることも、
彼女が壊れてしまうことも、
満月を見上げたこともーー
「そうだ。あの日も……僕は満月を見た。そして祈ったんだ」
あの子の笑顔が戻ることを
彼が僕らのもとに帰ってくることを
楽しい日々が戻ることを
……そしてあの日に戻りたい、と