誰も知らない物語
何度も見た師匠の死ぬところ。
師匠はいつも正面から弾丸二発を受け止めていた。そのうち一発は肝臓を貫くのがパターン化していた。
僕が頑張って師匠を避けさせると、次は彼女が傷を負わされ、そして師匠も撃ち殺されるという事態に発展した為、それはやめた。
とにかく、師匠が僕らに極意を教えてくれた後、弾丸が師匠を貫く前に、師匠の正面に立てば、弾丸は僕を貫き師匠は死なないはずだ。
……僕にそんなことができるだろうか。
片腕を失い、落ちこぼれと呼ばれ続けた僕に。
いや、それでもやるしかないのだ。
だって彼を救えるのは僕しかいない。
彼女を救えるのも僕しかいない。
大丈夫。頭の中でのシミュレーションは何度も行っているじゃないか。
きっと出来る。してみせる。