誰も知らない物語
「そんなに師匠がいいの?」
彼女はぼんやりと外を眺めているだけで何も答えない。
「彼は死んだよ、僕らの目の前で」
「……黙って」
彼女は力なく、それでも確かに僕の言葉に反応した。
「僕じゃだめなの?
君のこと好きだよ。元気に笑う君が好きで、だから今の君を見ていると胸が痛むんだ」
「……黙ってって言ってるでしょ」
今日は黙るもんか。
僕だって思うことはたくさんあるんだから。
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