誰も知らない物語

「そんなに師匠がいいの?」

彼女はぼんやりと外を眺めているだけで何も答えない。

「彼は死んだよ、僕らの目の前で」

「……黙って」

彼女は力なく、それでも確かに僕の言葉に反応した。

「僕じゃだめなの?
君のこと好きだよ。元気に笑う君が好きで、だから今の君を見ていると胸が痛むんだ」

「……黙ってって言ってるでしょ」

今日は黙るもんか。

僕だって思うことはたくさんあるんだから。

< 43 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop