誰も知らない物語
「うぁああああ!」
だけど。
だけど僕は、彼女に生きていて欲しかった。
いなくなってほしくなかった。
全て自分の欲だけれど。
そして今日は満月の日。
願えばきっとあの日に戻れる。
願わなければ……このまま、だ。
ずっと死を望んでいた彼女。
彼女が生きることを望む僕。
彼女の意志を尊重するなら、師匠が死ぬ運命を覆せない今、この状況が最善だろう。
だけど僕の意志は違う。
こんな状況、最低最悪だ。
彼女と僕。
生と死。
悩んでいても時は流れ、徐々に太陽は沈んでいった。