その姿、偽りなり。
芽衣「だけど、翼のことをちゃんと知ったのは出会ってから半年後


その頃から私たちは休日も遊ぶようになって、よく翼の家に泊まりに来てた。


そこで気づいたの


翼も私と同じ喘息だってことに



翼ってばね、

自分が発作起きてるところ、絶対人に見せないんだよ。

いつも夜中に咳が出ると、私のことを考えてか部屋を出ていくし、昼間は必死に咳を我慢してる。


私、何年も一緒にいるから分かるよ


翼が病院に行ってないことも薬飲んでないことも。


だからね、今日みたいに帰りが遅い日は心配でたまらなくなるっ!


ねぇ、先生は医者でしょ!?

最近、翼の様子がおかしいの!


お願い!翼を診てあげて!」



真剣に俺にすがり付く彼女は涙を流していた。



ピンポーン



タイミング帰ってきた御巫さんは俺と視線を合わせると

「迷惑かけてすいません。」と深々と頭を下げた。



俺だって、彼女にあそこまで号泣しながら言われたんだ。そう簡単に引き下がるわけにはいかない。


「御巫さん、ちょっといいかな?あがって」



翼「は、はい。おじゃまします。」




彼女はおどおどしながらも、芽衣ちゃんの隣に座った。

「今ね、芽衣ちゃんから病気の話を聞いた。

それで、君を診察したいと思ってる」



翼「いいよ、ここでなら」


了解を得た俺は彼女の胸を聴診することにした。


想像してた通り、彼女の心音には雑音が混ざっている



つまり状態は良くない





沈黙の中、御巫さんは淡々と話始めた。


翼「良くないのは分かってる。だけど、病院には行きたくない。」



俺だって人間だから人の気持ちくらい分かる

誰だって自分から病院に行きたいなんて思わない。


「でもね、翼ちゃん」

この時、初めて彼女の下の名前を呼んだ



「このまま今日みたいに夜遅くに帰ってくる生活を続けてたら、どうしても体に負担がかかる。そしたら嫌でも病院に行かなきゃいけない日が来るかもしれない。」

その時、彼女が自分の掌を握りしめていることに気づいた



今、どんな思いで聞いているんだろう?



芽衣「翼?つばさはもう十分頑張ったよ?これからは自分の体を大事にしなきゃ」


翼「前まで出来ていたことが少しずつ難しくなる。体が悲鳴をあげるんだ。

頭ではまだ出来る、まだ動ける


そう思ってるのに思うように動かない…


私、悔しい。


まだ、諦めたくないよ…」

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