その姿、偽りなり。
そのまま彼女はほとんど残っていない力で俺を部屋から、そして家から追い出した。




もちろん、無理やり居座ることだって出来た。




だけど俺に出来ることは、回復の手助けであって、本人に良くなろうという意志がない限り、治療は出来ない






拒否られてる以上、俺は用なしだ。





それから2週間近く、当直以外の日は23時ごろに帰宅していたが、彼女の家に電気が点いていることはなかった。





そして、あの日のことを忘れ始めた頃




俺はたまたま車の中から登校中の彼女を見つけた。




そういえばよく見ると、あの制服ってこの辺じゃ結構有名な進学校だよな




そんな学校の生徒が夜中までバイトしてるなんて考えられない



そもそも、高校生は22時までしか働けねぇし





その日の仕事中は夜中に彼女が何をしているのかという疑問で頭がいっぱいだった。




単身赴任だからって子供の教育はしろよな


なんて思いながら風呂上がりに涼むためベランダに出る





すると隣から物音が聞こえた



今日は帰ってきてたのか



ん?話し声が聞こえる



誰か来てんのか?



「こうやって話すのも久しぶりだね」


彼女の声だ!



「だって翼忙しそうなんだもん。最近授業中も眠そうだし、バイト入れすぎなんじゃないの?」


おそらく彼女の友達だろう




それより、やっとわかった。

彼女の名前は御巫 翼




「大丈夫だよ。それにあと2ヵ月の我慢だから」



「そんなこと言って、体に負担かけちゃゴホッ」




「ほら、人のこと心配してる場合じゃないでしょ!ゆっくり深呼吸!


はい、吸入器。」



医者がこの会話を聞けば、芽衣という子は発作を起こしたということが直ぐに分かる




「もうコホッ大丈夫」




「良かった。」




「しかし、なんで喘息ってこんなに辛いんだろうね。


もう病院行きたくないのに」




「ほんと厄介な病気だ」




「ねぇ翼?」


「ん?」


「翼は病院行かないの?」


「行かないよ。」


「で、でもそれじゃあ…」


「めい疲れた顔してる。ほら、寒くなってきたし部屋いって寝よう?」


「う、うん。」


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