その姿、偽りなり。
「何か飲む?」


芽衣「いえ、水持ってるんで気にしないでください。」


「偉いね、ちゃんと病気のこととか、発作が起きたときのことも考えてるんだ。」


彼女のバッグの一番上には、薬を飲むための水と、喘息には欠かせない吸入器が入っていた。


芽衣「偉くなんかないですよ。

すごいのは翼です。」



「えっ?」


芽衣「私、昔はもっと我が儘だったんです。

病気だから許される甘えを、ひたすら先生や看護師、親にねだってきました。


だけど、翼に会って変わったんです。


翼とは今の高校で1年のときに同じクラスになって仲良くなりました。

たしかに初日から不思議なオーラを放ってはいたけど、誰に対しても笑顔で接する彼女はクラスの子達から好かれてた。


私も彼女の明るい性格に憧れてた。

同時に皆に尊敬される彼女を羨ましいとも思った。


それからすぐに、体育で長距離を走りました。

私はどうしても参加したくって無理に出席して、けっきょく走り終わったときに発作を起こした。

トイレで必死に吸入してたら、翼が入ってきて…

発作が治まるまでずっと背中を擦ってくれた。


私が病気だと分かっても、拒絶せずに


今までそんな人いなかったから、純粋に嬉しかった。

それからです、私が翼と行動するようになったのは」



「そうだったんだ。」
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