雨恋日和。
プロローグ
土砂降りの雨の中、私は傘もささずに泣きじゃくっていた。
まだ幼かった私は知らない場所でお母さんとはぐれ、独りぼっちになってただただ怖くて仕方なかった。
不意に前を見ると、知らない男の子が立っていた。
私より少し背が高い。
その男の子は不安で泣いている私を、静かに抱き寄せてくれた。
「大丈夫。きっとすぐ見つかるよ。」
「ほんとに?」
私が不安げに聞くと、男の子は「うん」と優しい口調で答え、私が泣き止むまでずっとそばにいてくれた。
その温もりは不思議と安心できて、本当にすぐ見つけられるような気がしてきた。
「これ、あげるよ。」
男の子が手を差し出した。
そこにあったのは小さくて可愛いピンクのお花だった。
「いいの?」
私が聞くと男の子は意味深く笑って、
「うん。じゃあ、またね。」
そう言って走り去って行った。