私雨。1

私雨。9

大志田の電話の相手は大垣だった。

………………
「二人に会いに行かせた民間の気象学者が東京に来てたんだよ。
それで20年前の事を聞いたら覚えていてくれた。20年前に尋ねて来た男が、【私雨】の事を熱心に聞いて帰ったそうだ。真行寺と情報屋の写真を見せたら、真行寺は知らないが、情報屋の顔は覚えていたそうだ」

「情報屋が真行寺に頼まれて………調べに行ったか?」
「あぁ、そうだろうな」
「情報屋を締め上げるか?
まだうちで押さえてるからな、今のうちに真行寺との繋がりを見つけたいしな」
「その手もあるけどな……」

寝屋川が携帯電話を取った。
……………
「さっき話した、うちの班の気象マニアだよ」
寝屋川はメモを取りながら、10分程して切った。
「ノートの最後に書かれた日付けは、過去の日付け、前後の日付けと照らし合わせた結果、今日、と言うことだ」
「今日!!!」
「このノートを素人でも読めるように(訳)すには、やっぱり専門機関(気象学者)に頼んだ方が早いと言うことだ」
「それで、今日と言うのは?分かっているだけでいいから言ってくれ!」
「今日午前9時30から10時。S区三郷一丁目から三丁目に掛けて、1時間あたり50mmから70mmの豪雨の予測。、とある」

大志田は時計を見ながら、部屋の窓から外を見た。
「もうすぐ9時だ。本当に降るかな?三郷か………病院からは遠いな」
「病院って?」
寝屋川が聞き返した。
「あぁ、いや、、もしかしたら、真行寺が狙われるかもしれない、そう思ったんだ。犯人と直接接点があると思われるのは、真行寺だけだからな。片桐、椎名に連絡してくれ、油断するなってな」
「分かった」


片桐は携帯電話を持ち、話し始めた途端、電話口で怒鳴り始めた。
「何故もっと早く言わないんだ!」

「大志田!真行寺が病院を変わったぞ!」
「………?」

「真行寺の意識が戻った。
あそこは救急病院だ!本来の入院施設のある病院に移した、と言うことだ!今、救急車の後を椎名が追ってる」
「早すぎる!」

「誰が指示したか分からないが、意識が戻り次第病院を変わる手筈になってたらしい。椎名にも知らされてなかったんだ。
穂波町の宮坂病院だ!」

「片桐!地図を出してくれ!」
片桐はいつも持ち歩いている都内全域の地図を出し、テーブルに広げた。
「穂波町………S区……三郷!宮坂病院は一丁目だ!」


「片桐!課長に連絡して所轄の応援を要請してくれ!
大垣達にも宮坂病院に向かうように言ってくれ!それからお前の班も駆り出してくれ!俺はこのまま病院へ向かう!」

片桐は慌てた。
「待て!相手はおそらく武器を持ってるぞ!丸腰で行くな!」
「許可を貰う時間がない!先に行くぞ!」

「待て!馬鹿野郎!行くな!」
片桐は大志田の背中に罵ったが、既に大志田の足音は遠くに行っていた。


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