殺してあげる



何かがプツリと音をたてて切れた。


と、同時に鮮明に映る世界はクリアで視界は果てしなく遠くまで見える。

暗闇でも昼間と同じように見える。


きっと、魂が体にあるとしたら、さっき聞こえた音は、完全に体から引き離された時の音なのかもしれない。

雑音もない。

無音の中に私はいる。




のむ?




飲んでいい?




わたしを、のむの?




私を、飲む?




このまま私の体が放置されたら、間違いなく二週間もしたら肉は半分は溶け落ちるだろう。



更に2週間したら浴槽の下に溶け落ちた肉や皮膚や崩れ落ちた骨などが沈み、湯は茶色く濁り、そこに虫が湧き、ひどいにおいになって、



どろどろの人間スープになるだろう。



『わたし』の形は無くなり、『モノ』と化す。



でも、今ここにいる『わたし』は、下にいる私とは別人だ。











わたしは、どこに行けばいい?


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