殺してあげる

浴室に設置されていたビデオを、慣れた手つきで持ってきた箱につめ、浴槽の中に浸かっているわたしに手を合わせた。






『なんで? わたしは、ここにいるのに』





キクカワは手を合わせた後、手袋をはめたその上から腕がすっぽり隠れるような黒いゴムの手袋をはめた。



そして、



浴槽に浮かんでいるわたしの髪の毛を掴んだ。


それをゆっくりと持ち上げる。

虫がぼたぼたと落ちる。

溶け残った肉の破片が糸を垂れる。


額が見え、半分溶け落ちた目玉がぶら下がっているのを用意してきたカメラにおさめた。




『ひどい』




更に高く持ち上げると、そげおちた鼻………



が、見えたと思った直後、ジュルっと音を立てて頭蓋骨と頭皮が分離した。


キクカワの手元にはずるむけた頭皮とそれにくっついている髪の毛だけが残り、


頭蓋骨は泡を立てながらのんびりと沈んでいった。







最後に『ゴトリ』と頭蓋骨が浴槽の下についた音が聞こえた。







それが、わたしの最後の記憶となった。


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