殺してあげる

どこに連れて行かれるんだろう。

霊柩車の運転手は若い男だった。

目を合わせない男は外で待っていた私にびっくりしたが、それ以降は淡々としているように見えた。

慣れた手つきで私を霊柩車の中に誘導した。

直感的に、これが初めてじゃないなと感じた。

でも、その方がいい。

慣れている方がスムースにいく。


あちらへ逝くことだけを考えたい。


だから、彼くらいの対応が好ましい。


手慣れていてほうが段取りもよく、最低限の苦痛にしてくれることだろう。そう願う。



そして、調べてある。




しぬということが、どれだけ苦しいことなのか。
生きるよりはるかに苦しいことを私は知っている。

寿命を全うしないで、私のように途中で自らドロップアウトするような奴には、数倍、数百倍の苦しみが伴うことをも、ちゃんと分かってる。



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