殺してあげる

しばらくすると車が止まり、運転していた男は外に出た。

バタンとドアの閉まる音に、砂利を踏む音。

遠ざかる足音に神経を集中させた。

しんと静まり返って我にかえると、棺の中は真っ白で、シルクのように滑らかな手触り。

冷たくて、滑らか。

枕のようなものも柔らかく気持ちがよかった。

棺の蓋を手で押し上げると簡単にずれた。

私は好奇心からその蓋を全部外して体を起こしてみた。



周りを見てみると、




森?




いや、正面、フロントガラスの向こうには家が見える。

その中に黒いスーツを着た男が入っていく後ろ姿があった。



どこ?



こんなところで何が始まる?


こんな山奥で、人の気配もなんにもない。


棺から出ようと足を棺の外に出した時に、息を飲んだ。


そこから外が見える。


スモークが貼られているため外からは見えないんだろうけど、中からはよく見える。




森の入り口、そこには………

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