殺してあげる
「アイコサマはあ、他の人たちと違うんです。
なぜそんなに死に急ぐんでしょうか? 加穂留に教えてはいただけませんかあ?」
死に急ぐ……か。
べつに急いでいるわけじゃない。
いずれ終わりが来るのだから、今終わったとて同じ話。早いか遅いか、それだけだろう。
ただ、それだけのことだけど、そう聞かれて考えたことはなかった。
「加穂留は……どう思う?」
「うわあ。質問返しですかあ。加穂留あんまり好きじゃないな、そういうの」
「死のうと思ったこと、ないの?」
「……軽く無視なんですね。そういう方ですよね。じゃあ、答えますけど、んー、それはありませんね」
「ないの?」
「はい」
「一度も?」
「はい」
「そうなんだ」
加穂留はやっぱ私とは違う。
きっと悩み事なんてないんだ。
だから、のほほんと生きていられる。
「正確にはあ……今はもう無いって言ったほうがいいかもしれませんねぇ」
「あったんじゃん」
「過去には」
「それってどういうことで」
「…………もう、忘れましたあ。遠いむかあしのことなので。加穂留、その時の記憶………
無いんですよねぇ」
「記憶がない?」
「はい。ぜーんぜんありません」
「…………」
「ただあ…………今はもう死のうとは思わなくなりましたねぇ。だって……」
「だって、なに?」
「あ、残念、もう時間みたいですね」