殺してあげる
ギギっと錆びた鉄が擦れる音。
もわっとした臭いは、血の腐ったような臭い。
眉を寄せ手で口元を覆う。
横に座る加穂留を見たら、顔色ひとつ変えず、笑みを浮かべている。
「……っ……加穂留」
「キクカワ、あんたまたやってくれたわね」
「わ……わるい、知らなくて」
「お客が来てる時にゴミの処理をするなと何度言えばわかる?」
「本当に……悪かったから、だか……らその」
「……次やったら、あんたどうなるか分かってるよね。言ったよねえ……」
「わかってる」
目の前で繰り広げられているこの光景、
キクカワは明らかに狼狽し、加穂留から距離をとった。
肩には黒い袋がひとつ。
ヒトのようにも見えるし、たんなる荷物にもみえる。
もしかして、加穂留もキクカワも私と一緒に逝きたいとか?
一緒に逝ける人を待っていたとかじゃないだろうか。だって、この二人、慣れてるし、怖がっていない。
だったら一緒にあの世に行こう。
加穂留とキクカワはなんだか少し変わっているから、安心する。
「今……から犬のエサに……」
「今やることじゃないじゃないそれ! っとに、何の役にもたたないんだから! いっそお前を処理してやりたいところよ! あの人がいなかったらとっくにあんたの始末をしてるわ!」
「……わ、わるいだからそのあの」
ふーっと溜め息をついた加穂留は、舌打ちをして手であっちへ行けというふうにひらひらとやった。まるで自分を落ち着かせているかのよう。
キクカワがおずおずと目の前を通過していったその時、担いでいるものから羽根のようなものがひらりと落ちた。
赤茶色いそれは、うっすら血の臭いがしていた。