殺してあげる
「その仕事、私にはできないってことね?」
「残念ながら」
「ほんと、残念だけどわかった。これ、本当に死ねるサイトだったんだ。あんたが手伝ってくれて殺してくれるんだ。確かに私の最終目的は死ぬこと。これで、やっと死ねる」
ついぞ自由だ。私は天上の世界に召され、そこで永遠に生きることができるんだ。
この体が無くなるその瞬間は、一体どんなものなのか。どういうふうになるのか、楽しみでしかたない。
長年考えてきたことがようやくかたちになる。
加穂留の仕事についてはもっといろいろ聞きたいこともあるけど、逝けるのがすぐそこなら聞く必要もない。この世のものはあの世には持っていけない。
物も、思考もなにもかも。
「アイコサマ、これを」
小さな四角くて黒い箱が四つ。その両端にはマジックテープがついていた。
加穂留は器用に私の両ふくらはぎと二の腕に装着した。それが取れないように、鍵をかけた。
用意周到だ。
脈拍計かなんかだろうか。
本当に死んだのかを確認するものなのかもしれない。そんなことしなくても、望んでそれを受け入れるのに。
外で犬が唸っている。
「アイコサマ、どうぞ、外をご覧になって」
外?
言われた通りに外を見て、度肝を抜かれた。
先程キクカワが運んでいった荷物は、どうやら人の死体だったようだ。
羽根が辺りに散乱し、食いちぎられたモノは茶色く変色しているが、不自然に折り曲がった指から腕だと予想できる。
キクカワは霊柩車のボンネットに座り、たばこを吸っている。