殺してあげる
ひとつの腕に何頭もの犬が群がり、さらに細かく引きちぎられる。
体から取り外そうと食らいついたまま顔を左右に振って肉を引きちぎろうとしている犬もいる。
その場に座り、べろべろと舐め回している犬もいた。
その側にキクカワがいて、ビデオカメラにその様子を撮り続けていた。
一歩引き、加穂留の様子をちらりと見たら、無表情でその光景を眺めていた。
時おり、手だけでキクカワに録るべき場所を指示し、このなんともいえない独特な臭いになど興味がないようだ。
臭いがきつくて、何度も喉元まで込み上げてきたが、それをどうにかこうにか胃に押し戻した。