殺してあげる
加穂留は少し戸惑った表情で私を見ていて、傷をつけられた腕に手を当てた。
ガラスの破片をぎゅっと、自分の手は傷つけないように握り直し、加穂留の顔を目掛けて走った。
無表情で私の目を見ている加穂留に不気味さを感じ、身体中がぞわりと音をたてた。
あと二歩で加穂留の顔にガラスが刺さるその距離まできたとき、ガラスを持っている右腕に強い衝撃を受けた。
動かなくなる腕。
キクカワがいつの間にか部屋の中に入って来ていて、私の腕をつかんで……
ものすごく恐ろしい目で睨んでいた。
「っ……はなっ……」
放せ!
と、言い終わらないうちに私の体は宙に浮き、砂ぼこりで茶色く汚れた壁に叩きつけられた。
背中を強く打ち、呼吸ができない。
ガラスの破片をジャリッと踏みにじんで歩く靴音。
キクカワの黒い靴がすぐそこに見える。
起き上がり、壁に背中を押し付けた。逃げられない。
キクカワの足が腰まで上がり、私を蹴るんだか踏みつけるんだかわからないけど、とりあえず痛め付けられるのは覚悟した。
「キクカワ!!」