殺してあげる
力の限りにスタンドを振り回し、バカみたいに近寄ってきた犬に当たってギャンと鳴き、足を引きずるように加穂留の方へ逃げて行った。
「加穂留の犬、傷つけないでください。許さないですよ」
耳をつんざく破裂音のあと、視界が真っ赤になった。
ガクンと崩れ落ちる体に自分でも驚いた。脳みそがこの状況についていけていない。
だって、足に力が入らない。
右足にぜんぜん力が入らない。
いつもとは違うバランスに左足はどうしたらいいのか分からなくて不自然に膝が曲がり、前のめりになる体。
両手を地面についたとき、不自然な理由が分かった。
右足、膝から下が無い。
足元には真っ赤な血が流れていてどんどん広がっていく。
肉の破片が辺りに散乱し、生臭い臭いが自分の鼻に届いた。
血の海の中に、四つん這いになっている私がいる。
不自然なもので、無い足を見た途端に何かがおかしいということが脳に伝わり、流れでる血を止めようと、着ていたジャケットを脱いで足に巻き付けている自分がいた。発狂しながら。