殺してあげる
「キクカワ」
「……はい」
チャッと音がして、そこに目をやると、キクカワが黒くて細長い物を持ちながら現れた。
ライフル?
あれで私を撃つんだ。
あれで私、撃たれるんだ。
「やめ……」
「ませんってば」
ドン。
心の準備もできないままに放たれた銃。白い煙を上げて加穂留とキクカワの顔を霞ませた。
左腕が軽くなった。そして、熱い。
ガクンと落ちる左肩、音をたてて流れ出す血。
目の前の真っ白い床に飛び散った大小さまざまな赤い水玉。
鏡に映る自分の左腕は真っ赤で、
真っ赤で……
真っ赤で……
更に音をたてて肉の塊がぼとりと落ちた。
そこに無い腕を動かそうと脳みそは指令を出すけれど、体から切り離されたそれに届くはずがない。