殺してあげる
ノートパソコンに向かってぱちぱちと文字をタイプする。
書いては消し、書いては消しの繰り返しで、なかなか先へ進まない。
私はほぼ一日中こうやってパソコンに向かい、画面に上がってくる情報に振り回されている。
わずかな時間で終わることもあるし、何ヵ月かかかることもある。
準備に時間もかかるし、抱えている仕事はこれだけじゃないからいつも何かに終われている。
この仕事がなくなる頃には"ふつう"に戻れるのかもしれない。
しかし"あの人"は、私はもう普通にはもどれないだろうと言った。
いや、そんなことは本当はとっくの昔に気付いていたことなのかもしれないけど、
それを認めるのが怖かったから、そのすべてを否定してきた。
私『加穂留』の仕事は、人を殺めることだ。
パートナーは『キクカワ』
キクカワがどんなやつなのかは分からない。どういうことかというと、キクカワを見る人によって、イメージが変わっていくから。
時にはすごく魅力的に映ることもあるし、残忍に映ることもある。また、守ってやりたくなるように映ることもあるし、邪険に扱いたくなるように映ることもある。
今回の仕事は前のグループに比べたらいくらか難しかった。
皆最後まで記憶を保っていたから、やりにくかった。
だいたいは途中で気を失うか、失神したまま、そのまま逝ってしまうかのどちらかだったから、正直今回は戸惑った。
しかし、これから仕上げにかかれば、これで"あの人"のことを満足させられるに違いない。
手早くパソコンを操作して、今までに撮りためた映像をまとめて送った。
あとは返事がくるのを待つだけだ。
それで、全てが終わる。